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ダイナミックレンジ計算ソフトウェア

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Index

  • はじめに
  • ダイナミックレンジの計算方法
  • ダイナミックレンジ計算ソフトウェアの使い方
  • ダウンロード

はじめに

ダイナミックレンジは、スペアナで最も重要なスペックの一つです。通常右図のように入力された2つの信号を規定された確度で、他の歪の影響なく測定できる限界のことをさします。

広義で考えれば、スペアナの最大入力レベルに対してノイズフロアまでのレンジをダイナミックレンジと呼ぶこともありますが、実際にはスペアナ内部には様々な非線形デバイス(ミキサ、アンプなど)が含まれておりますので、入力信号に応じてスペアナの歪が発生します。

よって、スペアナでダイナミックレンジという場合には、通常スペアナの内部で歪が起こらない状態で、どこまで低い非線形歪が測れるかをさします。


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ダイナミックレンジの計算方法

ダイナミックレンジを計算するには、大きく分けて以下の4つの項目を理解する必要があります。

  1. ノイズフロア(最小表示雑音レベル:DANL
  2. ミキサの2次高調波歪特性 (dBc)
  3. ミキサの3次(相互変調)歪特性 (dBc)
  4. 位相ノイズ特性 (Phase Noise dBc/Hz)

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これらの値は通常スペアナのデータシートに記載されておりますので、それらを参考にすることでダイナミックレンジを計算することができます。ノイズフロアを考えるときの注意点は、ノイズレベルはIF分解能帯域幅(RBW)を変更することで変わることです。RBWを狭くすることでノイズレベルは下がりますので、RBW最小設定が小さいスペアナのほうが、ノイズフロアが低く設定できますのでダイナミックレンジが稼げます。

ミキサの2次歪特性と3次歪特性はスペアナのダイナミックレンジを考えるうえで最も重要です。通常、測定対象となるミキサやアンプなどの歪を測定するときに、スペアナの歪も同じ場所に存在するため、切り分けができなくなるからです。スペアナの2次(高調波)歪や3次(相互変調)歪は、通常以下のように仕様化されていることが一般的です。

例: アッテネータ 0dB時

  • 2次高調波歪
    ≦-70dBc (ミキサ入力 -30dBmの時) 100MHz ≦ f <800MHz
    ≦-80dBc (ミキサ入力 -10dBmの時) f ≧ 800MHz
  • 3次(相互変調)歪
    ≦-80dBc (ミキサ入力 -30dBmの時) f ≧ 200MHz

2次歪、3次歪は通常入力レベルに対してリニアに増減しますので、上記のように一つのポイントの歪がわかれば右図のようにグラフ化することができます。
この図の横軸はミキサへの入力レベル(スペアナ入力レベル-アッテネータの減衰量)で、縦軸は入力信号に対するノイズレベル(C/N比)となります。2次歪と3次歪の特性がわかれば、その特性直線とノイズフロアの特性直線の交点が歪が出ずに最も低いレベルが稼げる限界点となります。つまりその交点のC/N比の値(dB)がダイナミックレンジであり、そのダイナミックレンジを得るための最適入力レベルもわかるという仕組みです。

さらに位相ノイズの影響を考える必要があります。相互変調歪は2つのトーン信号をいれて測定しますが、そのトーン間隔(Hz)に相当するオフセット値での位相ノイズを考慮に入れる必要があります。位相ノイズが十分に低ければ影響は無視してもよいですが、もし位相ノイズが、2次・3次歪と表示雑音の交点よりも高ければ、位相ノイズの量がダイナミックレンジの限界となります。


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ダイナミックレンジ計算ソフトウェアの使い方

実際にダイナミックレンジを考えるときには、このグラフを書くのが最も近道ですが、ある程度知識が必要です。アジレントから提供するダイナミックレンジ計算ソフトウェアはその計算の面倒を全てソフトが実施してくれます。

ステップ1: ソフトウェアのダウンロード
まず、ソフトウェア (Dy_Range.exe) をダウンロードしてください。すでに実行形式となっておりますので、そのまま任意のディレクトリにセーブし、ダブルクリックで実行できます。

ステップ2: 設定画面の立ち上げ
ダブルクリックで実行すると右図のような画面が現れます。F9を押すと設定画面が立ち上がりますので、そこに数値を入力していきます。







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ステップ3: 設定条件
条件設定画面は右図のようになっております。2次歪の値とそのミキサレベル、3次歪の値とそのミキサレベル、そして表示平均雑音レベルとそのときのRBW設定はかならず埋めてください。そのほかの不確かさや位相ノイズに関してはわかれば入力する程度で結構です。終了すればOKを押してください。

















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ステップ4: 2次歪・3次歪を表示
それでは、メイン画面にもどり、F1を押してください。まず、設定条件に記載された2次歪のポイントが点で表示されます。次にF2を押すとそのポイントを元にした、理論上の歪特性直線が表示されます。この特性をみることで、スペアナに何dBいれたときにどれだけの2次歪がおきるかを把握できます。















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同様に3次歪を書いて見ましょう。F3を押すと設定した3次歪のポイント、そしてF4を押すとその理論上の歪特性直線が表示されます。これでスペアナの入力レベルによる2次歪・3次歪特性が把握できました。
















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ステップ5: 表示平均雑音レベルの表示と、ダイナミックレンジの把握
表示平均雑音レベルは、先ほどと同様にF5を押すことでポイントが表示され、F6を押すことで特性直線が表示されます。ただし、表示平均雑音レベルはRBWの設定が変わるとその値が変わります。

特性直線の上に、「DANL= -xxxdBm , RBW = xx Hz」がかかれていますが、そこにかかれているRBWが現在の設定です。RBWと雑音レベルの関係はログの関係ですので、RBWを1/10にすれば、雑音レベルは10dB下がります。この計算をこのソフトは自動的に行ってくれます。

キーボードの矢印キーの上下キーを押してみてください。そうすることでRBWの値が変わります。スペアナのモデルによって最小RBW設定値が異なりますので注意ください。ここでは、最小の値を知りたいので、最も小さいRBW値にしてみてください。先ほど述べたように、この赤・青・緑の直線の交点がダイナミックレンジとなります。
 

ダイナミックレンジチャートを書くことで、重要なことがわかります。

  1. 最小何dBcの高調波・相互変調歪が測定できるか?
  2. スペアナの入力レベルを何dBにするか? (アッテネータを何dBに設定するか?)

測定するうえで最大入力レベルを把握することはとても重要です。

スペアナの内蔵アッテネータを何dBに設定すべきか、また内蔵アッテネータの増加によるノイズの増加を防ぐために、外部アッテネータを何dB入れれば最適なダイナミックレンジが得られるかを把握することができます。

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ステップ6: 位相ノイズの影響
最後に位相ノイズのプロットをここに足し合わせて見ます。キーボードの「Insert」を押すと、緑のプロットで位相ノイズのプロットが追加されます。

右図のケースのように最大ダイナミックレンジのポイントよりも位相ノイズが上に来ている場合は注意です。いくらミキサによる歪が低く抑えられていても、位相ノイズが先にノイズフロアを隠してしまいます。したがって、このような場合には位相ノイズの影響を考慮に入れなければなりません。

しかしながら、通常位相ノイズを気にしなければならないのは、非常に間隔の狭い2トーン信号を使用した相互変調歪測定のケースがほとんどです。間隔が広い場合には位相ノイズは十分に低いため影響はでません。

またディジタル通信などで用いられる広帯域変調信号の隣接チャンネル漏洩電力比(ACPR)測定の場合にも重要です。

隣接チャンネル漏洩電力比の場合には、特定帯域内のノイズが積算されますので、位相ノイズの値とは比べ物にならないノイズが付加されます。このソフトでは位相ノイズを積算する計算はできません。


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ソフトウェアは下記からダウンロードしてご利用下さい。